2024年は訪日3,686万9900人/消費8.1兆円で過去最高。ただし弱い円が大きく押し上げた。論点は「キャパ制御×地元還元×質」への転換。

誰が旗を振り、なぜそうしたのか

  • 2003年:小泉政権が「訪日客倍増」を掲げ、ビジット・ジャパン開始。
  • 2006–08年観光立国推進基本法観光庁発足で“観光は国策”に。
  • 2016年:政府「観光ビジョン」で2020年4,000万人/2030年6,000万人へ上方修正。
  • 背景は少子高齢化による内需細りと、サービス輸出による外貨獲得

何が起きたのか(成果)

  • 量は歴史的成功:2019年3,190万人→2024年3,687万人、訪日消費8.1兆円
  • ただし為替依存が濃く、逆回転リスクを内包。

影:オーバーツーリズムと外部不経済

  • 生活道路の機能不全、私有地侵入、無断撮影・ごみ等が顕在化。
  • 京都・祇園では私道に立入禁止+1万円の罰金掲示まで出現。
  • 支出は都市・繁忙期に偏在し、住民側に清掃・警備・騒音・交通のコストが集中。

いまの転換点(対策)

  • 第4次 観光立国推進基本計画(2023–25)持続可能性×地方分散×単価向上をKPI化。
  • 富士山・吉田口ゲート+深夜規制+日上限4,000人+有料化(25年は4,000円に)。
  • 財源の手当て:京都は**宿泊税の大幅引上げ(上限1万円)**方針。

事例①:京都(清水〜祇園)—「多入口×狭小路」の破綻

  • 現場:五条坂・清水坂・茶わん坂〜二寧坂/産寧坂へ人と車が同時集中。住居接近・扉接触・私道通行・無断撮影・ごみが常態化。
  • いまの一歩:観光バス予約制や季節的な車両流入制御宿泊税大幅引上げ
  • 提言(梅・竹・松)
    • :繁忙期の観光バス予約厳格化私道の可搬バリケード常設/民間巡回の常時化
    • 歩行導線の時間帯一方通行駐車料金サージ課金行為違反の定額反則金(即時徴収)
    • 人数×時間の予約上限を寺社・路地に恒常化/宿泊税の“学区・町内”超局所配分で「住民の純益>純負担」を制度化。富士山モデルの京都版移植。

事例②:鎌倉(鎌倉高校前踏切)—「映える地点」と道路安全

  • 現場:小町通〜長谷〜「鎌倉高校前」踏切に路上撮影・私有地接近・路上駐停車が集中。
  • いまの一歩:2025/9に撮影エリアを公園側へ振り分ける実証。誘導員・多言語案内、P&R促進
  • 提言(梅・竹・松)
    • 可搬ポール+導線で車道進入を即時阻止/指定撮影エリア徹底/民間巡回
    • 繁忙期ロードプライシングパーク&ライド本格化。
    • 宿泊税(観光税)導入→町内単位の地理連動還元で住民合意を持続。

観光は「役に立って」いるのか

  • マクロ:外貨獲得・雇用創出でプラス、2024年は数量・金額とも記録更新
  • ミクロ:外部不経済が地元に偏在。お金の地理的回帰が弱い。

次の一手

  1. キャパ前提運用上限・予約・課金・実罰KPI(上限遵守率/違反対応時間/ゴミ満杯放置〈2h)で常設。
  2. 地元還元の回路宿泊税の“超局所”配分(学区・町内)を明文化し、清掃・警備・静音舗装・子育てに自動充当。
  3. 量→質へ:販促・ビザ・免税の焦点を高付加価値×長期滞在に寄せ、円安耐性を高める。

当初の賭けは正しかったか/代案は?

  • 評価:外需として観光を伸ばした判断は半分正しい。ただし量と為替に過度依存し、住民コスト偏在を後回しにした設計は不十分。
  • 当時でも可能だった代案:主要地点の恒常的な予約・上限・サージ課金MICE・長期滞在先行/宿泊税の地理連動還元。技術的には可能、政治的合意と執行体制が壁。

出典

  • JNTO「訪日外客数(2024年)」
  • 観光庁「訪日外国人消費動向(2024年)」
  • 観光立国推進基本法(2006)・観光庁(2008)
  • 政府「明日の日本を支える観光ビジョン」(2016)
  • 第4次 観光立国推進基本計画(2023–25)
  • 京都市:宿泊税の見直し(上限1万円)
  • 京都・祇園:私道立入禁止・罰金掲示(報道)
  • 富士山・吉田口:ゲート運用・日上限制・通行料(2024→2025の改定)
  • 鎌倉市:鎌倉高校前踏切の撮影エリア実証(2025/9)・混雑情報・P&R施策

By chappy